こんにちは。所長の萩原彬です。
今日は、離職を考えている方に役立つ、さまざまな給付金制度について解説します。
最近、SNS広告で
「退職するだけで200万円!」
「退職給付金400万円!」
「いくらもらえるか、まずはクリック!」
といった言葉を、よく見かけませんか。
一見すると、「えっ、辞めるだけでそんなにもらえるの?」と思ってしまいそうですが……結論から言います。
これらの多くは、“ミスリード”です。
これらの広告は、雇用保険や健康保険に存在するさまざまな給付金制度を、あたかも誰でも簡単に多額のお金を受け取れるかのように見せかけ、手数料を得ることを目的としたビジネス広告にすぎません。
詐欺とまでは言えないものの、実際には特別な専門家に依頼しなくても、自分で正しく手続きをすれば、手数料を支払うことなく受け取れる制度ばかりです。
目次
・「退職給付金」って何?・それぞれの制度について解説
・傷病手当金(健康保険の被保険者)
・基本手当:失業保険(雇用保険の被保険者)
・再就職手当(雇用保険の被保険者)
・公共職業訓練(雇用保険の被保険者と雇用保険未加入者)
└離職者訓練 訓練延長給付(雇用保険の被保険者)
└求職者支援訓練 職業訓練受講給付金(雇用保険未加入者)
・教育訓練給付金(雇用保険の被保険者)
└教育訓練支援給付金(雇用保険の被保険者)
・退職金(会社が独自に支給するもの)
・損をしないために
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◆ 「退職給付金」って何?
私はこれまで、総務・人事の仕事も経験してきました。
会社の労務や手続き関係にはある程度詳しいほうだと思います。だからこそ言えますが、「退職給付金」という制度は厳密には存在しません。
SNSの広告で言う“退職給付金”とは、実際にはこんな複数の制度の寄せ集めです。
• 傷病手当金
• 基本手当:失業保険
• 再就職手当
• 公共職業訓練
└離職者訓練 訓練延長給付
└求職者支援訓練 職業訓練受講給付金
•教育訓練給付金
└教育訓練支援給付金
• 退職金
これらを全部まとめて「退職給付金」と言っているだけなんです。
もちろん、制度自体はどれも本当に存在しますし、利用できれば生活の助けになります。でも、「辞めるだけで200万円!」という言い方は、実態からかけ離れた“キャッチコピー”に過ぎません。
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◆ それぞれの制度について解説
ここでは、それぞれの制度について、簡単に概要をご説明ます。
①傷病手当金
②基本手当
③再就職手当
④公共職業訓練
└ 離職者訓練:基本手当の受給延長
└ 求職者支援訓練:職業訓練受講給付金
⑤教育訓練給付金
└ 教育訓練支援給付金
⑥退職金
以下それぞれの詳細です。
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①傷病手当金(健康保険の被保険者)
病気やケガで働けなくなったときの生活を支える制度です。
対象
- 健康保険(協会けんぽ・組合健保など)の被保険者
- 病気やケガで仕事に就けない状態にあること
※ 雇用保険ではなく、健康保険の制度です。
支給内容
- 給与のおおよそ3分の2
- 連続する休業 4日目から支給
- 最長 1年6か月
重要なポイント
- 「退職したらもらえるお金」ではない
- 働けない状態にある間の生活費補助
- 条件を満たせば、退職後も継続して受給できる場合がある
- 初回申請手続きは会社に依頼する必要のある書類がある
- 怪我や病気で働けなくなって休み始める時期に注意
→退職前の少なくても四日前から連続して会社を休む必要がある
→退職日に出勤していてはいけない等
ひとことでまとめると
傷病手当金は、
病気やケガで働けなくなった人の生活を支える、健康保険の給付制度です。
必ず、自分が加入している健康保険組合などに、退職前に詳細を確認することをお勧めします。
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②基本手当(失業保険/雇用保険の被保険者)
仕事を辞め、次の就職先を探している間の生活を支える制度です。
対象
- 雇用保険の被保険者
- 働く意思と能力があり、求職活動をしていること
- ハローワークで手続きを行っていること
支給内容
- 離職前の賃金の約50〜80%(年齢・賃金による)
- 支給日数は
- 離職理由
- 年齢
- 雇用保険の加入期間
によって異なる
※ 自己都合退職の場合、原則 給付日数は短め になります。
重要なポイント
- 「辞めたら自動的にもらえるお金」ではない
- 求職活動の実績が必要
- 病気やケガで働けない場合は、原則対象外
(その場合は①傷病手当金)
ひとことでまとめると
基本手当は、
次の仕事を探している間の生活を支える、雇用保険の給付制度です。
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③再就職手当とは
失業保険(基本手当)を受け取る予定だった人が、早期に再就職した場合に支給される給付金です。
対象
- 雇用保険の基本手当の受給資格がある人
- ハローワークを通じて、または認められた形で再就職した人
- 一定期間以上、安定して働く見込みがあること
支給内容
- 失業保険の残り日数に応じて支給
- 一時金として、まとめて支払われる
※ すべての人が同額になるわけではありません。
重要なポイント
- 「再就職すれば必ずもらえる」わけではない
- アルバイトや短期雇用では、対象外になる場合がある
- 失業保険を満額もらった後では、支給されない
ひとことでまとめると
再就職手当は、
失業期間を短くして早く働き始めた人を後押しする、雇用保険の給付制度です。
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④ 公共職業訓練とは
就職に必要な知識や技能を身につけるために、ハローワークが実施・案内する職業訓練制度です。
対象
- 仕事を探している求職者
- 雇用保険の被保険者・未加入者のどちらも対象
※ 重要なのは
「ハローワークが就職のために必要と認めた訓練」であることです。
訓練の種類
公共職業訓練には、主に2つの枠があります。
1. 離職者訓練
- 雇用保険の基本手当の受給資格がある人
- 訓練期間中も、基本手当(失業保険)が継続・延長される→訓練延長給付
- 原則、学費は無料(教材費等は自己負担)
2.求職者支援訓練
- 雇用保険を受給できない人
- 条件を満たせば、職業訓練受講給付金として月10万円が支給される
- 原則、学費は無料(教材費等は自己負担)
重要なポイント
- 自己判断で通う学校や講座は、公共職業訓練にはならない
→ハローワークでの面接と、学校側での面接試験などがある場合がある - 募集時期・定員・選考がある
→必ず最寄りのハローワークに確認
→何より、時期やタイミングが重要
→講座や学校によっては、年に1度しか入学するタイミングがないので、可能なら1年以上前から計画しておくことをお勧めします - すべての訓練が、いつでも受けられるわけではない
→入りたい講座や学校が、毎年この枠を押さえているわけではない
ひとことでまとめると
公共職業訓練は、
就職のために必要なスキルを身につけながら、
状況に応じて生活を支える給付も受けられる制度です。
何より早めの計画&ハローワークへの事前相談が必須です。
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⑤教育訓練給付金(雇用保険の被保険者)
働く人のスキルアップや学び直しを支援するための、雇用保険の給付制度です。
対象
- 雇用保険の被保険者
- または、離職後 一定期間内 の人
※ 公共職業訓練とは異なり、自分で選んだ講座を受講する制度です。
給付の種類
教育訓練給付金には、3つの区分があります。
1. 一般教育訓練給付金
- 比較的短期間の講座
- 受講費用の 20% が支給
2. 特定一般教育訓練給付金
- 再就職に直結しやすい資格・講座
- 受講費用の 40% が支給
3. 専門実践教育訓練給付金
- 専門学校・高度な資格取得など
- 受講費用の 最大70% が支給
(修了後の就職で追加支給あり) - 教育訓練支援給付金
→支給要件:専門実践教育訓練の教育訓練給付金を受給中、昼間通学制の専門実践教育訓練を受講、受講開始日時点で45歳未満等
→給付額:雇用保険の基本手当の日額の60%に相当する額
重要なポイント
- 生活費の支給はない(一部給付あり:教育訓練支援給付金)
- 原則、受講後に支給される
- すべての講座が対象ではなく、厚生労働省が指定した講座のみ
ひとことでまとめると
教育訓練給付金は、
自分で選んだ学びに対して、学費の一部を支援する制度です。
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⑥退職金とは
会社が独自の制度として支給するお金で、国の給付金や保険制度ではありません。
対象
- 退職金制度を設けている会社の従業員
- 支給の有無・条件は会社ごとに異なる
※ 法律で義務づけられているものではありません。
支給内容
- 金額は
- 勤続年数
- 退職理由(自己都合・会社都合など)
- 会社の規程
によって決まる
- 一時金として支給されることが多い
(年金形式の会社もある)
重要なポイント
- 誰でも必ずもらえるお金ではない
- 国やハローワークの制度とは完全に別
- 会社の就業規則や退職金規程を確認する必要がある
ひとことでまとめると
**退職金は、
国の給付ではなく、会社が独自に用意している「社内制度」**です。
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◆ 損をしないために
上記で記載した通り、全ての手続きは、自分で実施可能です。最寄りのハローワークへ行って、まずは相談してみましょう。
ではなぜ、代行業者がいるのか?
それには理由があります。
単純な制度ではない(名称もややこしい。誤解が生じやすい)ので、窓口の担当者によっては、詳細を知らない方もいらっしゃるようです。
その場合、「この担当者、よく知らないな?」と思ったら、詳しい方に聞いてきてもらうよう、窓口担当に伝えてみてください。ハローワークの窓口の担当者の中にも、詳しくない方が意外といらっしゃいます。担当者によっては、間違った回答をしてしまい、利用者も知識がないと、受け取れるものが受け取れなくなってしまう可能性があります。
損をしないために
事前にキーワード検索をして、厚生労働省のページを印刷する、スマホですぐ開けるようにしておくなど、給付金について説明されているページを見せるなどすると、話が早くなります。
※この時参考にするサイトは、厚生労働省のホームページにしましょう。
参考までに、リンクを貼っておきます。
厚生労働省ホームページへ(公共職業訓練等)
そして何より、こうした制度は「困ったときのため」に国や自治体が用意しているものです。会社を辞めたり、体調を崩したり、人生が思い通りにいかなくなったとき——頼っていい仕組みです。決して“後ろめたい”ことではありません。
だからこそ、「知らないまま損をしない」こと、「必要なときに正しく利用する」ことが大切です。
今まさに「辞めるかもしれない」「休職中」「転職を考えている」という方が、高い手数料を払わず、自分の力で制度を活用できれば嬉しいです。とは言え自分だけで手続きすることが不安、会社の人にうまく伝えられない、会社が傷病手当や退職金について対応してくれないなどのお悩みがある場合は、ぜひ当方の相談サービスをご利用ください。
時間制で金額も明確なので安心してご相談いただけます。→問い合わせフォーム
制度は、今まで汗水流して働いてきた方々の味方です。
そして、「自分でできる」ことがたくさんあるという事実は、これからの人生の大きな武器になります。
最後に
これからも、みなさんにとって有益な記事を増やしていこうと思っております。
今日も読んでくださって、ありがとうございました。
所長 萩原彬
